体の中身をかきまぜると
1.かきまぜる相手(体)を用意しよう
このワークシートはMath by Codeの一部です。
<Qの拡大体の自己同型群は解をかきまぜる>
写像f:環V→環W; x →f(y) とするとき、
f(x+y)=f(x)+f(y), f(x×y)=f(x)×f(y),f(イチv)=イチw
が成り立つとき、fは準同型写像といったね。
環と同じように、体Kの積、和、イチを保存すれば、準同型写像(HomK)といい、
全単射なら同型写像(IsoK)といい、K自身への写像なら体Kの自己同型写像(AutK)という。
Hom,Iso,Autどれでも準同型fである以上は、逆元のfがfの逆元なので、
f(x/y)=f(x*y-1)=f(x)*f(y-1)=f(x)*f(y)-1=f(x)/f(y)だから、商も保存される。
でも全体としては保存されても、個々の要素で動き方がちがってくる。
たとえば、
Qに自己同型写像を作用させても、個々の要素についても何ら変化はなく、恒等写像になる。
このことを、Aut(Q)={id}とかこう。
Q[√2]では話が変わる。a+b√2(a,b∈Q)に自己同型写像fを作用させたとき、f(a+b√2)=f(a)+f(b)f(√2)=a+bf(√2)となるので、f(√2)=√2または、-√2の2つの可能性がある。
この符号判定の写がfだとすると、Aut(Q[√2])={id , f}の2要素が自己同型写像の集合になるね。
写像と写像は合成できるので、自己同型写像の集合は群をなす。恒等写像idがイチ。
これからは、有理数体Qの拡大体Kの自己同型写像群の意味でAut(K/Q)と書くことにしよう。
<最小分解体>
Q上のn次代数方程式f(x)=0の解をn個の解のリストをX={a1,a2,----,an}(重複可能)としたとき、
QにXをすべて添付した拡大体をK=Q(X)といい、最小分解体という。
最小分解体Kは、f(x)をすべての根aiに対応する1次式x-aiの積に分解できる拡大体だね。
(例)
f(x)=x-2の最小分解体K
f(x)=0の解はx=2(有理数)だから、最小分解体はK=Qのままだね。
(例)
f(x)=x2-2の最小分解体K
f(x)=0の2つの解はX={x1,x2}={ √2, -√2} だから、
最小分解体K=Q[X]となる。しかし、p= √2とするとx2=-x1=-pだから、2要素ではなく1要素添加の拡大体で十分だね。だから、K=Q(p)=Q(√2)としてよいでしょう。
だから、Q(√2,-√2)=Q(√2) 最小分解体KをQの単拡大に直すことができたね。
(例)
f(x)=x4-10x+1の最小分解体K
f(x)=0の4つの解はX={x1,x2,x3,x4}={ √2+√3, √2-√3, -√2+√3, - √2-√3} だから、
最小分解体K=Q[X]となる。しかし、p=(x1+x2)/2=√2, q=(x1+x3)/2=√3だから、
逆に、Xはp,qの四則で表現可能できる。だから、4要素ではなく2要素添加の拡大体で十分だね。
だから、K=Q(p,q)=Q(√2,√3)としてよいでしょう。
また、r=√2+√3とすると、√2+√3∈Q(√2, √3)だから、Q(√2+√3)がQ(√2,√3)の部分になることは自明だ。
その逆はいえるか?
Q(√2,√3)の要素である√2,√3,√6∈Q(√2+√3)が言えればいいね。
(r2-5)/2=(2+3+2√6-5)/2=√6から、√6∈Q(√2+√3)
√6(√2+√3)-2(√2+√3)=2√3+3√2-2√3-2√2=√2∈Q(√2+√3)
(√6(√2+√3)-3√2)/2=√3∈Q(√2+√3)。
だから、Q(√2,√3)=Q(√2+√3)最小分解体KをQの単拡大に直すことができたね。
(例)
f(x)=x3-2の最小分解体K
Kは、f(x)=0の3つの解はX={}とするときのQ(X)だけれど、
Xの3要素はωと の四則で計算できるので、K=Q(ω, ) とかける。
最小分解体Kの添付数を3ではなく2に減らすことができたね。
Q( )={p+q +r 2|p,q,r∈Q}では、ωを作れないので注意。
2.体のすべてのかきまぜ方(群)をしらべよう
ガロア群を定義する前に言葉を増やしておこう。
・根と解の微妙な言葉の使い分けをするときがあるようです。
f(p)=0となるpが方程式f(x)=0の解、f(x)が持つ(x-p)のpが多項式f(x)の根。
・体K上の多項式f(x)∈K[x]に対してf(a)=0となるa∈Kが必ずあるKを代数閉体。
L/Kが代数閉体になる代数拡大L/Kを代数閉包。(任意の体Kには代数閉包が一意的にある。)
・L/Kが体の拡大でa,b∈LがK代数ならa,bは同じ最小多項式を共有する。根a,bは共役だという。
どんな自己同型写像群Aut(L/K)の要素fをaに作用させても、f(a)とaは共役だ。
<ガロア群>
ガロア群はK/Qの自己同型群Aut(K/Q)の仲間だ。
KがQ上のn次代数方程式f(x)=0の最小分解体KのときのAut(K/Q)をガロア群Gal(f/Q)という。
ガロア群の要素の1つである自己同型写像autと、分解体Kの要素xについて、
f(aut(x))=aut(f(x))が成り立つ。もしも、αがf(x)=0の解ならば、
f(aut(α))=aut(f(α))=aut(0)=0。だから、自己同型写像によってf(x)=0の解xはかきまぜられても
解のままだ。
(例)
f(x)=x-2の最小分解体K=Qのガロア群Gal(f/Q)
ガロア群Gal(f/Q)はAut(Q/Q)={e}
恒等写像はeではなくidと書くことが多いようですが、eとしてます。
(例)
f(x)=x2-2の最小分解体K=Q(√2)=Q[√2]={a+b√2 | a,b∈Q}のときのガロア群Gal(f/Q)
ガロア群Gal(f/Q)はAut(Q[√2]/Q)={e , s}
√2の最小多項式f(x)=x2-2=0のQ上の√2の共役はX={√2、-√2}で、この2要素の置換群を調べる。
s(√2)=-√2, s(-√2)=√2,
e(√2)=√2, e(-√2)=-√2
ガロア群Gal(f/Q)=Aut(Q[√2]/Q)=S2={e, (1 2)}と同型になることがわかるね。
ガロア群のどの置換でもQは不変だ。
(例)
f(x)=x4-10x+1の最小分解体K=Q(√2+√3)=Q[√2,√3]={p+q√2+r√3+s√6|p,q,r,s∈Q}のガロア群Gal(f/Q)
√2+√3の最小多項式f(x)=x4-10x+1=0のQ上の√2+√3の共役はX={√2+√3,√2-√3,-√2+√3,-√2-√3}
この4要素の置換群を調べる。
e(√2)=√2, e(√3)=√3
p(√2)=-√2, p(√3)=√3
q(√2)=√2, q(√3)=-√3
r(√2)=-√2, s(√3)=-√3
ガロア群Gal(f/Q)はAut(Q[√2+√3]/Q)={e , p, q, r}=V4
ガロア群のどの置換でもQは不変だ。
位数が4でp*p=e, q*q=eだから、巡回群ではなく、クラインの4元群だ。
(例)
f(x)=x3-2の最小分解体K=Q(ω, )={a+bω+c +dω +e 2+fω 2| a,b,c,d,e,f∈Q}の
ガロア群Gal(f/Q)
の最小多項式f(x)=x3-2=0のQ上の の共役はX={1,2,3}={}。
この3要素の置換群を調べる。
S3={e, s:(1 2 3), r:(1 3 2), a:(1 2) , b:(1 3) ,c :(2 3)}とする。具体的には、
s( )=( ω )、s(ω)=ω
r=s*s
c( )=( ), c(ω)= ω2
a=sc, b=rc
この6置換で入れ替えがすべて表現できる。
ガロア群Gal(f/Q)はAut(Q[ω, ]/Q)=S3
ガロア群のどの置換でもQは不変だ。
Q( )={p+q +r 2|p,q,r∈Q}では、ωを作れない。 は に移すしかないので、
Aut(Q( ))={ e }
質問:ガロア群が最小多項式の根を置換するようすをコードで確認できるようにするにはどうしたらよいですか。
geogebraであみだくじを作ってみましょう。
3本の線に3点ずつ、合計9点を打ちます。
互換のための線を3本用意して、両端に2点をつけます。
互換のための点名と3本線の点名の重なり具合を場合分けします。
たとえば、a12の真理値は1と2が上で結ばれたら1、ないと0にします。
b12は1と2の中での連結、c12は1と2の下での連結で1,0を返します。
どうようにして、a23,b23,c23も1,0を返します。
そして、a12,b12,c12,a23,b23,c23の6つの値の関係から、1の行き先の番号をa, 2の行き先をb,
3の行き先をcにいれる論理式を考えましょう。
その結果としてのa,b,cの順列に対応して、置換表現としての行列を呼び出します。
行き先の行列の値を線の下に表示されるようにすればよいですね。
有理数が不変であることを表すには、0番目として移動できない線があるといいですね。