対角行列〜便利なこと
2次形式を標準化しよう
1.2次形式
係数行列A=[aij]と列ベクトルx,行ベクトルtxを使った2次の同次式を
2次形式[quadratic form]という。
2次元の場合の2次形式q(x)は、たとえば、
x=(x,y)のとき、係数がA={{1,1},{2,2}}なら、
q(x)=A[x]=txAx=[x ,y]{{x+y},{2x+2y}}=x(x+y)+y(2x+2y)=x2+3xy+2y2とどの項も2次の式になるね。
B=[bij]=[(aij+aji)/2]と提示すると、Bは対称行列になるね。
だから、結果として、対称な位置の係数は足し合わされるので、A[x]=B[x]となる。
2次形式の係数は、対称行列に直せるから、対称行列と仮定してよい。
(例)q(x)=2x2+2√3xy-3y2をA[x]の係数行列Aを求めよう。
x2,y2の係数2, -3が対角係数、xyの係数÷2=√3が反対角係数
A={{2,√3},{√3,-3}}
(一般化)
x=(x1,x2,....,xn)のとき、q(x)=txAxを2次形式という。
<直交変数変換>
2次形式の係数行列は対称行列と仮定できるので、直交変換で対角化できる。
だから、2次形式も対角化できるね。
直交変数変換でx=Pyと (Pが直交行列で、P-1=tP, D=tPAPで対角行列)すると、
q(x)=A[x]=D[y]
たとえば、
列ベクトルx=(x,y)で、A={{-1,2},{2,2}} のとき q(x)=A[x]
|tE-A|=(t-2)(t+1) -4 =t2 -t -6=(t-3)(t+2)=0, t=-2,3。
t=-2のとき、-x-2y=0、a=(x,y)=1/√5(-2,1)、t=3のとき、4x-2y=0, b=(x,y)=1/√5(1,2)
P=[ta,tb]=1/√5{{-2,1},{1,2}}が変換行列。Pは正規直交基底を並べているので、
Pは直交行列で、tPP=E, tP=P-1
Aは変換行列Pで、P-1AP={{-2, 0},{0, 3}}=Bと対角化できる。
このことを使い、2次形式q(x)=-x2+4xy+2y2を標準化してみよう。
q(x)の係数行列はAになるから、q(x)=A[x]=txAx新変数列ベクトルX=(X,Y)について、x=PX
として、両辺を転置しよう。
tx=t(PX)=tXtP=tXP-1 となるから、
q(x)=-x2+4xy+2y2=tx A x=tXP-1 A PX (結合法則で代入しただけです。)
=tX (P-1 A P) X= tXBX=-2X2+3Y2
2.2次形式の標準化
2次形式は上述のように、対角化をすることでxyの係数が0の標準的な2次曲線に変換できるね。
2次曲線の方程式に直交行列をかけて、形を変えずに方程式を単純化してみよう。
たとえば、
係数A={{2,√2},{√2,3}}のとき、q(x)=txAx=4がどんな曲線か、対角化で調べよう。
|A-tE|=(t-2)(t-3)-2=t2-5t+4=(t-1)(t-4)=0。から、対角化後の行列B={{1,0},{0,4}}
だから、左辺q(x)=X2+4Y2=4 となる。だから、(x/2)2+y2=1のだ円になるね。
(例)
係数A={{1,2},{2,1}}のとき、q(x)=txAx=3がどんな曲線か、対角化で調べよう。
|A-tE|=(t-1)(t-1)-4=t2-2t-3=(t-3)(t+1)=0。から、対角化後の行列B={{-1,0},{0,3}}
だから、左辺q(x)=-X2+3Y2=3 となる。だから、(x/√3)2-y2=(x/√3+y)(x/√3-y)=-1の双曲線になるね。
3。エルミート行列の対角化
成分が複素数であっても、固有方程式の解を使って、対角化ができる。
成分が複素数であっても、行ごとや列ごとに見たベクトルで、内積が定義できるので、
ふつうに内積が使える空間(内積空間)になる。
だから、ベクトルのノルムも角も計算できるので、今までの直交変換行列や、正規直交基底、
対称行列など、まったく同じような議論ができるので、同じ論法が使えるということだ。
複素数が複素平面においたベクトルと見ることができるのだから、論理の飛躍はないですね。
複素数ならではのルールもあるので、詳細を順に確認してみよう。
<複素ベクトルの内積>
x,yが成分を複素数とする列ベクトルとするとき、xの成分を共役複素数にしたベクトルをx*とかく
とすると、
xとyの内積はx・y=txy*
xのノルムは||x||=√(x・x)=√(txx*)
(例)
2つの列ベクトルx={{2},{1-i}}, y={{1+i},{3}}について、
x・y=txy*={2, 1-i }{{1-i},{3}}=2(1-i)+3(1-i)=5-5i=5(1-i)
||x|| =x・x=txx*={2, 1-i }{{2},{1+i}}=4+2=6
||y|| = y・y=tyy*={1+i, 3 }{{1-i},{3}}=2+9=11
<エルミート行列>
複素行列Aの成分を共役にして転置した行列、共役転置行列のことを、随伴行列といい、tA*のこと。
これを簡単にA*とかくとして、A*=Aとなる行列Aをエルミート行列という。
・エルミート行列の対角成分は実数だ。aii*=aiiだから実数となるね。
・エルミート行列は、固有値ti,tj,....が実数で、固有ベクトルui,ujが直交する。
<ユニタリー行列>
U*U=Eとなる複素行列Uをユニタリー行列という。
ユニタリー行列の列ベクトルは正規直交系になる。なぜなら、
列ベクトルの内積の結果が、対角成分のみ1で他が0になるということは、ベクトルの内積が、
自分自身のノルムが1で、他との積が0ということになる。だから、各ベクトルは正規直交系だね。
エルミート行列の固有値と固有ベクトルのペアの積Aui=ti ui
これを並べて作って式変形すると、AU=UQ(Qは対角行列)さらに、U-1AU=Q。
(例)
エルミート行列H={{ 2, 1+i },{ 1- i , 3}}
を直交行列(ユニタリー行列)Uを使って、対角化してみよう。
|H-tE|=(t-2)(t-3)-(1+i)(1-i)=t2-5t+6-2=t2-5t+4=(t-1)(t-4)=0。t=1,4が固有値だね。
U-1HU={{1,0},{0,4}}と対角化されるはず。
・t=1のとき、x+(1+i)y=0から、
y=1を代入すると、x=-1-i となり、
xx*+y2=1+2=3
・t=4のとき、-2x+(1+i)y=0 から、
y=1-iを代入すると、x=1となり、
x2+yy*=1+2=3
だから、たとえば、ユニタリー行列を
U=1/√3{{-1-i, 1},{1, 1-i}}とおけばよいね。