自然界は効率よくできている?
このワークシートはMath by Codeの一部です。
これから、20世紀のつぶ波の物理を学ぶ前に
古典物理でありながら、つぶ波の物理にも役に立つという
解析力学について学んでおこう。
1.ベクトルからスカラーへ
ニュートン力学では「力()」と「加速度()」というベクトルを中心に考えましたね。
でも、解析力学ではスカラー量である「エネルギー(EとかUとか)」を主役です。
ニュートン流は物と物という部分と部分の位置関係から考えましたね。
でも、解析力学では、系全体のエネルギーの配分という全体から考えます。
ニュートンの解析では、部分の情報は絶対デカルト空間の中の座標(x, y, z)に縛られます。 解析力学では、系の記述が先なので、座標系は任意です。 だから、解析力学は、量子力学でも相対論でも問題なく使えます。
2. 自然は効率よくできている
自然界は効率よくできている。
この思想を表すものが、解析力学の「最小作用の原理」です。
たとえば、物体が点Aから点Bへ移動するとき、
物体に意思はありませんけど、なぜ動くのか?どうしてそう動くのか?
自然界は「作用(S)」と呼ばれる量を最小(正確には極値)にするようなルートを
「選んで」進んでいる、と解釈するのが解析力学なのです。
これを数式化する道具がラグラジアンLというものだ。
運動エネルギーTとポテンシャルエネルギーVの差がラグランジアンLです。
つまり、
L = T - V
この Lを時間積分したものが作用 Sであり、自然は δS = 0 となる道筋を辿ります。
ここから導かれるのが、ラグランジュの運動方程式です。
カンタンのために、最初のカッコ内をLQ',
2番目のカッコ内をLQとしよう。
LQ'は一般化運動量pとすることが多い。
LQはLを位置で微分しているので、力と同じ次元になる。
Lがラグラジアン、qは位置の一般座標、tは時刻、q’は位置の時間微分、L=T-Vで、
ニュートンの運動方程式F=maの代わりになる。
ラグランジュの方程式は、
運動量pの時間微分=力
という意味の式になることからも、ニュートンの運動方程式になることがわかるね。
(例1)
たとえば、簡単のために位置を1次元の座標xにしてみる。
壁面に質量mのおもりのついたバネがついていて、つりあいの位置を0、おもりの位置をxにする。
運動エネルギーT=1/2 mx'^2
ポテンシャルエネルギーV=1/2kx^2 ( 復元力は位置xのおもりがついたバネなら-kx)
単振動の振動数ω=sqrt(k/m)から、k=mω^2となるので、
ラグラジアンL=T-V=1/2(mx'^2- mω^2x^2)。
LQ’=1/2∂/∂x'(mx'^2- mω2x^2)==1/2∂/∂x'(mx'^2)=mx'
LQ=1/2∂/∂x(mx'^2- mω2x^2)==1/2∂/∂x(- mω^2x^2)=-mω^2x
ラグランジュの運動方程式は
d/dt(mx')-(-mω^2x)=mx''+mω^2x=0
つまり、mx''=-mω^2xとなる。これはニュートンの運動方程式F=ma=-kxと同じ結果になるね。
(例2)
地面からボールの投げ上げたら4秒後に地面に戻った。地面からの高さをxとする。
運動エネルギーT=1/2 mx'^2
ポテンシャルエネルギーV=mgx
ラグラジアンL=T-V=1/2(mx'^2- 2mgx)。
LQ’=1/2∂/∂x'(mx'^2- 2mgx)=1/2∂/∂x'(mx'^2)=mx'
LQ=1/2∂/∂x(mx'^2- 2mgx)=1/2∂/∂x(- 2mgx)=-mg
ラグランジュの運動方程式は
d/dt(mx')-(-mg)=mx''+mg=0
つまり、mx''=-mgとなる。これはニュートンの運動方程式F=ma=-mgと同じ結果になるね。
4秒という時間を使わなくても、方程式ができた。加速度ーgで速度が変わることがわかる。
初速をv0とすると、加速がーgだから、v=v0-gt=0。
運動の対称性から、t=v0/g=4/2=2。g=9.8から、v0=2*9.8=19.6m/s
そのときの高さx=integral(v0-gt, 0, 19.6)= v0*t/2=19.6*2/2=19.6m。
X(t)グラフとV(t)グラフでボールの動きの確認
3.エネルギー全体に目をつけよう。
TとVの差に着目して、自然の効率性を表す経路を探るのがラグラジアンでした。
それに対して、
TとVの和に着目して、エネルギー全体を調べるのがハミルトニアンです。
ハミルトニアンHは、多くの場合、系の全エネルギーを表します。
H = T + V
具体的には
p=∂L/∂q'とLをq’で偏微分した一般化運動量を定めたとき、
H=q' p - L とハミルトニアンHを定めたとき、次の美しい正準方程式(canonical)が成り立つ。
dq/dt=∂H/∂p
dp/dt=-∂H/∂q
つまり、
qとpの時間微分がHのpとqの偏微分と等しい(p'にはマイナスがつく)。
ラグランジュLの世界では、位置と時間がカギになっていて、運動量はその過程で使われた。
しかし、
ハミルトニアンHの世界では、位置と運動量が対等、対称の関係にある美しい世界なのです。
(例1)
上の調和振動子の場合、ラグラジアンL=T-V=1/2(mx'^2- mω^2x^2)
p=mx' , q=xだった。
H=q' p -L=x' mx' -1/2(mx'^2- mω^2x^2)=1/2(mx'^2+ mω^2x^2)=T+V=E
HはTとVの和になりました。
いつもそうなるわけではなく、ポテンシャルエネルギーVが位置qだけの関数で、
運動エネルギーTがq'^2の定数倍のときに限る。
(例2)
ボールの投げ上げの場合、ラグラジアンL=T-V=1/2(mx'^2- 2mgx)
p=mx', q=xだった。
H=q' p -L=x' mx' -1/2(mx'^2- 2mgx)=1/2mx'^2+mgx=T+V=E
p^2=m^2x'^2を代入すると、p^2/2m + mgx=H
p = ±sqrt(2m(E - mgx))
px空間では、xがp^2の関数になっていることがわかる。
課題:px空間で正準方程式のベクトル化をgeogebraで視覚化するにはどうしますか。
例えば、
スライダーで
mを1以上10以下の1刻みにします。
gを9以上10以下で0.1刻みとして、初期値9.8にします。
Eを20以上200以下で1刻みとします。
f(x)=sqrt(2m(E - m g x))
h(x)=- f(x)
px空間を視覚化するには、pをy軸とします。
正準方程式が
x'=∂H/∂p=∂/∂p(p^2/2m + mgx)=p/m
p'=-∂H/∂q=∂/∂x(p^2/2m + mgx)=-mg
px空間の各点での勾配ベクトルを各点に打つために
視点(x,y)を数列にして、ベクトル(y/m, -mg)を各点の位置に加えた終点を組にしてvectorを作ります。
x、yは規定の変数のために,たとえば、(i, j)というパラメータを使ってベクトル場を作りましょう。
L1 = Sequence(Sequence(Vector((i, j), (i + j / m * 0.1, j - m * g * 0.1)), i, 0, E / (m * g), 2), j, -sqrt(2*m*E), sqrt(2*m*E), 5)
この GeoGebra の画面を眺めると、面白いことに気づきます。
投げ上げのとき: 運動量pが正(上半分)では、ベクトルは右下を向き
投げ下ろしのとき: 運動量pが負(下半分)では、ベクトルは左下を向き
px空間全体で見ると、中心(ポテンシャルの底)を軸に「時計回りの渦」が巻いているのが見えます。
投げ上げでも投げ下しでも1つに包括するpx空間の流れの中の1つの経路として
1つの出来事が起きている。
通常なら反対のことに見えるものが1つの全体として統合できているのが、
pq位相空間だということがわかるね。
px空間で正準方程式をベクトル化してハミルトン流を感じよう
4.美しい代数のしくみに目をつけよう
<ポアソン括弧>
任意の物理量 F(q, p)と G(q, p)があったとき、その「絡み具合」を計算する以下の操作をポアソン括弧と呼びます。一般化座標をq、一般化運動量をpとします。
[F,G]=∂F/∂q・∂G/∂pー∂F/∂p・∂G/∂q これがポアソン括弧[F,G]です。
ポアソン括弧の性質を事例を通してさぐりましょう。
[F,F]=∂F/∂q・∂F/∂pー∂F/∂p・∂F/∂q = 0
[p,p]=∂p/∂q・∂p/∂pー∂p/∂p・∂p/∂q = 0*1-1*0=0
[p,q]=∂p/∂q・∂q/∂pー∂p/∂p・∂q/∂q = 0*0-1*1=-1
[q,p]=∂q/∂q・∂p/∂pー∂q/∂p・∂p/∂q = 1*1-0*0=1
[G,F]=∂G/∂q・∂F/∂pー∂G/∂p・∂F/∂q = -(∂F/∂q*∂G/∂p-∂F/∂p*∂G/∂q)=-[F,G]
以上から、2つの基本的な性質が見えます。
反対称性: 順番を入れ替えるとマイナスになる。
基本正準関係: 自分自身には0、[q,p]=1
ポアソン括弧を使うと、
正準方程式は、
dq/dt=1*∂H/∂p-0=∂q/∂q*∂H/∂p-∂q/∂p*∂H/∂q=[q,H]から、q'=[q,H]
dp/dt=0-1*∂H/∂q=∂p/∂q*∂H/∂p-∂p/∂p*∂H/∂q=[p,H]から、p'=[p,H]
という、マイナスのあるなしが隠蔽された、p、qについて対称な方程式に化けます。