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集合+しくみ=空間

このワークシートはMath by Codeの一部です。 前回までは、 無限個の数の集合を 切り分けて、並べ替えてみたり、 相似のように拡大して対応づけてみたり、 加算個のようにならべようとしたり、 してみました。 いろいろなオペをすることで無限個どうしが同等かどうかを調べましたね。 数の大小や表示は使っても、つながり方や次元という視点を入れてない議論でした。 だから、線分と平面が同等になるなど、非常識?な結論も出てきました。 「集合」は「要素のつながり」が定義されていません。 しかし、要素どうしに「つながり方、しくみ」を追加すると、「空間」になります。 たとえば、単位元、逆元という「演算のペア」というつながりを集合に入れてあげることで、 群、環、体という数のつながりの方の空間、代数の世界が広がりました。 たとえば、和と定数倍で閉じているという「比例」のつながりを集合に入れてあげることで、 線形空間たち、線形代数の世界が広がりました。 今回は、図形のように「近さ」にかかわるつながり方、しくみを集合に追加することでできる 近さの基本は距離ですね。距離のある空間、図形の世界について調べてみよう。

開集合の積集合を色の濃さでイメージしよう。

1.ユークリッド空間

<距離から近傍へ> 2点の距離がピタゴラスの定理の拡張で定められた点集合R,R2,R3を 1次元、2次元、3次元ユークリッド空間といいます。 ユークリッド空間の「部分集合」を「図形」と呼ぼう。 数直線Rの中の図形は線分・区間ですね。 つまり、2点X,Yの距離(distance) を第i成分がxi,yiとすると、ピタゴラスの定理を連続適用した式で、 dist(X,Y)=sqrt(Σ(xi-yi)^2)と決めることができるね。数直線Rを基本にしてイメージを作っていこう。 次は、Rの点aの「近く」Xを「距離」を使って定義してみる。 Rの点aから距離がイプシロン未満の点のあつまりXをaの「ε近傍」(ε-neighborhood) といいNε(a)などとかく。(未満を強調するときは開近傍と呼ぶ。) つまり、X=Nε(a)={x | dist(a,x)<ε }。 aにうったはずの点がぼやけてシミのように滲んだイメージだね。 ユークリッド空間Rでの近傍は開区間の記号でNε(a)=(a-ε, a+ε) とも書けるね。 開区間(a,b)∍xに対して(a,b)に含まれるNε(x)が必ずとれる。εはいくらでも小さくできるからね。 だから、近傍は、開区間という親分が無限に持てる子分のようなイメージになるね。 「近傍」という言葉を使うことで、 「ただふちがないというだけの点集合である開区間」が、 「同質の集団を無限に隠し持てる図形の帝国のように見えてくるから不思議だ。 <近傍から開集合へ> 開区間を一般化したものが開集合(open set)。 開集合は、開区間をR1,R2,R3に拡張した互換バージョンだ。 線分とはかぎらず、空間の中にある「ふちのない図形」が開集合のイメージ。 2Dなら「ふちなしの穴」、3Dなら「泡の中にある空気」みたいな図形になるね。 開集合Aは中に近傍Nε(x)が入る、近傍を覆ってる。 つまり開区間と同じ性質をもつ集合が開集合の定義。 「同質の集団を無限に隠し持てる図形の帝国」が2D,3Dでも使える道具になった。それが開集合だ。 (当たり前ですが、開区間、ε近傍も、もちろん開集合ですね。) (例) 開区間A=(0,1)は開集合だ。Aの中の点xについて、ε=min(x,1-x)/2とすれば、Nε(x)がAにおさまる。 (例) 開近傍Nε(0)は開集合だ。中心0、半径δ=ε/2のNδ(0)近傍が開近傍Nε(0)の中に納まるね。 <開集合の仲間をふやそう> 開区間は全体を内部と外部に切り分ける穴、シミのような図形。  最大はそれ自身でR、最小は 空集合だ。  R全体の中ではどこでも近傍がとれる。空集合は要素あれば近傍が必要だが要素がないから合格。 ・開集合(1,3)の中の点{2}を抜いた集合(1,2)∪(2,3)は、任意の点に近傍がとれるので開集合だ。  穴が2つに分かれても、(1,2)と(2,3)のそれぞれの穴の点では近傍が入るからね。  ここからおもしろいことがわかります。ふちなしならば、離れていてもOKということ。  また、穴の輪郭をたくさんかいて、その中のぜんぶ重なったところに本当の穴をあけてもいい。  だから、開集合の無限OKの和集合は開集合です。開集合の有限の積集合(重なり)も開集合です。 (例) On=(n,n+2) (nは整数Z)とすると、Oi は幅2で1ずつスライドしながら無限に移動して数直線R全体を覆います。だから、和集合はRそのものです。無限個の開集合の和集合が開集合になりました。 (例) 上記の設定で、有限個の共通部分つまり積集合は空集合か開区間ですから、開集合です。 (例) Fn=(-1/n,1/n)(nは自然数N)とすると、Fnはx=0を中心にする開近傍で無限に小さくなります。 しかしすべて{0}という共通部分があります。無限個の開集合Fnの積集合は{0}で、開集合になりません。 (例) Fn=(0,1+1/n)(nは自然数N)とすると、Fnのはしbn=1+1/nは1より大きいので{1}はFnに入ります。 だらから、{1}はFnの無限列の共通部分です。無限個の開集合Fnの積集合は(0,1]で、開集合になりません。 <閉集合の仲間をふやそう> ・開集合と対照的なのは閉集合です。  開集合の補集合 R-開集合=閉集合と定義します。  R-R= , R- = R だから、R, ともに閉集合になるので、  これらは閉集合でもあり開集合でもある二面性のある特異な集合ですね。  開集合を穴でイメージしてみよう。開集合の穴をあけた残りは縁があるから閉集合になる。  開集合は、スカスカじゃない、境界線も含む中の詰まった普通の図形という感じだね。 ・開集合の和集合の穴を、Rにあけた残りは切れぎれだけどかならず縁がある。これも閉集合だ。   開集合の積集合の穴をあけた残りは開集合を1つとった残りだから閉集合になる。  つまり、閉集合の無限個もありの積集合は閉集合です。  積集合は閉区間になり、Rとの補集合が開集合だから。  閉集合の有限個の和集合は閉集合です。 (例)  数直線Rから{0}をぬいた集合はどこでも近傍が入るから開集合だから、1点{0}は閉集合ですね。  つまり、Rの1点はどれも閉集合だから、有限個の点列は閉集合。 (例)  有限な自然数の集合P{1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}も閉集合。R-Pは開集合になりますね。 (例)  Gn=[1/n, 1-1/n](nは3以上の自然数)とすると、[1/3, 2/3],[1/4,3/4],[1/5,4/5],.......,[1/1000,999/1000],... a=1/n, b=1-1/nとすると、n→∞のとき、a→0, b→1となります。  開区間(0,1)の点xとすると、無限個のGnの和集合をHとすると、xはHに入るでしょう。  また、逆にどのGnもHの部分になります。だから、H=(0,1)ですね。 ・開集合でも閉集合でもない図形は、片側だけ開集合とか。  自然数の有限集合={1,2,3,4,5}。 ・開集合はふちが入らないことで、内部の点の近傍が無限にとれるのでサイズは小さくても無限性を内包した図形です。一方で閉集合は際があるので、内部の点が端にこれるから有限、有界を内包した図形と言えるでしょう。R全体と空集合は要素サイズの極限的な集合なので、二面性をもってしまうのですね。 <連続関数は、開集合の原像(逆像)が開集合になる関数> 関数の「連続性」と言えば、ε-δ論法というのがあったね。 ・関数f(x)がx=aで連続しているときは、 「y軸にあるb=f(a)の小さなε近傍Nε(b)=(b-ε,b+ε)「的(まと)」がある。 後だしジャンケンでδを決めて、x軸の近傍Nδ(a)=(a-δ,a+δ)から矢を放ち、 グラフで反射するとy軸の的にあてられる。」 ということだ。連続がすべてのxに対して成り立つと連続関数ということになるね。 ・ε‐δ論法と同じように「先にy軸に的を作る。x軸から矢を射る」 という順番のまま、集合に翻訳してみよう。 先にy軸に開集合として、開区間(a,b)の「的」を作る。 グラフのうちY=(a,b)のゾーンにあるものを緑にぬる。 緑が2Dの開集合ならそれをx軸に打ち返してそのままx軸の開区間が対応してきまる。 緑色が分散するとx軸の開区間も分散するけど、開区間の和集合は開集合になるね。 しかし、緑にぬったところに不連続な点があればその点を赤にぬる。 そのままx軸に打ち返すと閉区間ができてしまうね。 だから、 関数f(x)が連続なのは、y=f(x)の任意の開集合Yの原像(逆像)が開集合であること。 簡単でわかりやすいね。 質問:開集合の原像が開集合であることが、連続関数の定義だと気付ける例をgeogebraで視覚化するにはどうしたらよいでしょう。 たとえば、あえて不連続な関数y=x3-3x(x>=0), y=x2-1をかくとします。 開集合Y=(-c,c)の原像Xはグラフをyが-2と2の間にくる部分のf-1(y)です。 連続な部分の原像は開区間になります。(Ax,Ex), (Dx,Cx) 不連続な部分の原像は半閉区間になります。[F,Ix] デデキントの切断から、x=0で切れている場合、x=0での点は正か負の片方だけにつなげるから、 Yの開集合にたして、グラフに断絶があるときはグラフの原像の中に開区間以外が入ることが 目で見てわかるでしょう。

開集合の原像が開集合になるか?

<実数の連続性を集合で考える> 閉集合を使うと、実数の連続性も説明できます。 カントールの定理(閉区間縮小法) 閉集合の列X={ | an, bn| } が入れ子になって縮んでいき、n→∞で|bn- an|→0とするならば、 Xは1つだけ行先になる実数xがきまる。 (閉区間縮小法と同値な説明が他にもあります。  連続の公理(有界集合の上限下限の存在)、  有界な単調数列の収束性、   デデキントの公理(デデキントの切断)、  アルキメデスの原理+完備性(コーシー列の収束)  これらは同値です。詳細は省略しますので、興味のある人は調べましょう) <開集合からコンパクトへ> 数直線Rにある図形Xに対する開被覆というのは、 図形Xを無限個OKの開集合の和集合で覆ったものです。 もし、2Dならば図形Xの上にふちなしのシミをずらして重ねていき隠れるようにしたシミ全体です。 3Dなら図形Xをふちのない泡をずらして重ねていき隠すときの泡アワ全体です。 (例) ・Fn=(0,n/(n+1))(nは自然数)の無限列{Fn}は開区間(0,1)を覆えますから、開区間(0,1)の開被覆です。 ・On=(n,n+2) (nは整数Z)の無限列{On}は数直線全体Rを覆えるので、数直線Rの開被覆です。 ・Gn=(n-1/2,n+1/2)(nは自然数)の無限列{Gn}は自然数N全体を覆えますから、自然数N全体の開被覆です。 ・Gn=(n-1/2,n+1/2)(nは自然数)の無限列{Gn}はF={1,2,3,4,5}を覆えますから、閉集合Fの開被覆です。 ・Fn=(0,n/(n+1))(nは自然数)の無限列{Fn}は閉区間C=[1/2,9/10]を覆えますから、閉区間Cの開被覆です。 図形Xの開被覆(無限個の開集合の覆い)のうちから有限個選んだ開集合の和集合で覆えるなら Xをコンパクトといいます。 有限個だから多い少ないという話しではなく、図形Xをふちなしの線分や円板や球が無限になくても 覆い隠せるだけ、有限で有界なかたまりですよ。というのがコンパクトという意味だね。 ・閉区間[a,b]はコンパクトです。これはハイネ・ボレルの定理といいますね。  開区間(a,b)はコンパクトではない。  無限個の開区間(a,a+(b-a)*n/n+1)の和集合で覆えるが有限個では覆えないのから、  ・しかし、閉集合でも整数全体集合みたいに範囲の制限がないとコンパクトになりません。  ユークリッド空間の中の図形Xがコンパクトというのは、有界な閉集合のことで、  Rの中の図形なら最大値・最小値を持ちます。 ・また、コンパクトな図形Xを連続関数fでうつした図形f(X)はコンパクトなままです。  閉区間[a,b]で定義された連続関数fの像は有界な閉集合になるので、  最大値・最小値があるというこですね。 (例) ・Fn=(0,n/(n+1))(nは自然数)の有限列{Fn}は開区間(0,1)を覆えないから、開区間(0,1)はコンパクトでない。 ・On=(n,n+2) (nは整数Z)の有限列{On}は数直線全体Rを覆えないので、数直線Rはコンパクトでない。 ・Gn=(n-1/2,n+1/2)(nは自然数)の有限列{Gn}は自然数Nを覆えないから、閉集合Nはコンパクトでない。 ・Gn=(n-1/2,n+1/2)(nは自然数)の有限列{Gn}はF={1,2,3,4,5}を覆えるから、閉集合Fはコンパクトだ。 ・Fn=(0,n/(n+1))(nは自然数)の有限列{Fn}は閉区間C=[1/2,9/10]を覆えるから、閉区間Cはコンパクトだ。

2.距離空間

ユークリッド空間の相対化、抽象化のために 距離の定義をピタゴラスにこだわらないことにしてみましょう。 距離は遠さ、近さを表してました。 距離は直線距離に限りません。 タクシー距離(マンハッタン距離)とかがあります。 <距離の公理> AとB距離の考え方は AとAの距離は0で、AとBの距離は正。 AからBもBからAも距離は同じ(対称律) d(AB)+d(BC)≧d(AC)(三角不等式) このルールにあえば、距離の計算ルールはピタゴラスである必要はありませんね。 (例)マンハッタン距離 東西南北に平行な道路が走る町のA地点からB地点までタクシーで移動すると、最短距離をすすむと 最短距離dist(AB)=|x(A)-x(B)|+|y(A)-y(B)|になるね。これは、途中でカドを何回まがったかに関係ないね。 (例)成分差Maxの距離 マンハッタン距離と同様に成分ごとの差の絶対値をとりますが、その和ではなく最大値を距離とします。 最短距離dist(AB)=Max(|x(A)-x(B)|,|y(A)-y(B)|) さて、近傍開集合、関数の連続を思い出してください。 距離の具体的な定義とは関係なかったです。 だから、距離をどうはかるかとは関係なく、ユークリッド空間で決めたり見つかったことが、 なんと、距離空間全体で使えるのです。 ・aのε近傍Xは、Nε(a)={x | dist(a,x)<ε }。 ・開集合Aは中に近傍Nε(x)が入る、近傍を覆ってる ・関数f(x)が連続なのは、y=f(x)の任意の開集合Yの原像(逆像)が開集合であること。 ・図形Xに対する開被覆というのは、図形Xを無限個OKの開集合の和集合で覆ったもの。 ・図形Xの開被覆のうちから有限個選んだ開集合の和集合で覆えるならXはコンパクト。  (Xがコンパクトなら、Xは有界な閉集合です。しかし、距離空間の場合は、その逆は  必ずしも成り立ちません。) ・コンパクトな図形Xを連続関数fでうつした図形f(X)はコンパクトなままです。 すばらしい。 抽象の勝利ですね。 ただし、距離の定義を変えてしまうと、空間を回転のような等長変換をしたつもりでも、 長さのもとになる基底ベクトルまで動いてしまうために、 距離が変わってしまうことがあるので注意しよう。 距離の定義は、そこまでの保証はしていません。 質問:マンハッタン距離が三角不等式を満たしていることをgeogebraで視覚化するにはどうしたらよいでしょう。 Aを原点にして一辺の長さが1の正方形APQRを作ります。 PQ上に点B(1,p),QR上に点C(q,1)をとっても一般性を失いません。 d(AB)=x(B)+y(B)=1+p d(BC)=x(B-C)+y(C-B)=1-p+1-q d(AB)+d(BC)=1+p+1-p+1-q=2+1-q≧2 d(AC)=x(C)+y(C)=q+1≦2 だから、d(AB)+d(BC)≧d(AC) これがわかるように、縦線と横線を色分けしてみましょう。 質問:3つの距離(ユークリッド、マンハッタン、成分差Max)でR2の半径1の開球をgeogebraで視覚化するにはどうしたらよいでしょうか。 ユークリッドが半径1の円、マンハッタンは|x|+|y|=1の正方形、 成分差Maxは|x|、|y|ともに1以下の正方形になります。 ちなみに、R3では、ユークリッドが半径1の球、マンハッタンは3成分の絶対値和=1の正8面体、 成分差Maxは3成分ともに絶対値が1以下の立方体ですね。

マンハッタン距離の三角不等式

距離の定義を変えた開球

3.視点を増やそう

今までの流れでは、 閉集合は開集合の補集合として決めました。 しかし、 閉集合から決めることもできる。 <集積点、導集合、閉包> Xを距離空間にある図形Aがあり、Aの点xの近傍Nε(x)のεをどれだけ小さくしてもxとは別のAの点yを含むのが集積点だ。式でかくと、 Nε(x)∩(A-{x}) ≠空集合となるxのことだ。Aから孤立してない点ということだ。 イメージとしては、集積点xの周りにいくらでも近づけるAの点yがあるということだ。 xそのものは、Aの点である必要はないので、 集積点はAがつまっているときの内点や境界線の点、点列がどんどん密集していく行先などだ。 Aの集積点をあつめたものをAの導集合Adという。 集積点はAの点である必要はなかったので、Aの内点と外点の境界がAに属してない場合、境界線が集積点になる。だから、導集合Adにはこの境界線がはいる。また、密集する行先の点も入る。 つまり、Aの導集合AdはAの際を全部含むものといえる。 Adを部分にもつ集合Aを閉集合という。(Ad=Aとなる集合Aを完全集合という。) (例) an=1/n(nは自然数)の集合A={an}は閉集合ではない。集積点{0}はAの点ではないが,Ad={0}。 だから、B={0}∪Aは閉集合。 (例) an=1/n(nは自然数)の集合B={0}∪{an}。集積点{0}はBの点でBd={0}。Bは閉集合。 (例) A={0, ±1, ±2,......}は集積点がないので、Ad=空集合。AはAdを部分にもつから閉集合。 (例) Xの閉集合Aを含む、Xの閉集合族の共通部分は閉集合で、Aの閉包という。Acと書こう。 ・AcはAを含む閉集合。これは定義からあきらか。 ・A∪Ad=Ac。 ・Aを含む任意の閉集合FはAcを含む。 ・Ac=AであることとAが閉集合であることは同値。