5.数列の極限
★数列はけなげに淡々と動く
このページは電子ブック「探求 数学Ⅲ」の一部です。
1.数列は関数
<数列anの収束と発散>
自然数kに対応する関数akのリスト{a1,a2,....,an,....}を無限数列[sequence]という。
(例)1,1/2,1/4,.....,1/2n-1,.......は無限数列だ。
・数列anが番号の大小と数列の大小と同じなら単調増加。大小が反対なら単調減少という。
・単調増加数列のどれもM以下なら上に有界、単調減少数列のどれもN以上なら下に有界という。
M以下ということはM未満でもよい。だから、Mは最大値というわけではない。
同様にN以上はNより大でもよかから、Nが最小値というわけではない。
(例)1/2, 2/3,3/4, .......,n/n+1,.....は1をこえないので、上に有界。
・適当な正数εに対して、N(ε)をこえる番号nからは|anーα|<εが成り立つようなN(ε)が選べるとき、「anは極限値はαだ」や「anはαに収束[converge]する」という。(コーシーの定理)
つまり、anのαとの差異が適当なεにおさまるようにできる無限数列のことだね。
・有限な極限値を持たないときは、発散[diverge]するという。
発散の1つめは、anが∞(正の無限大)または、−∞(負の無限大)に発散する場合。
これを単純発散[properly divergent]という。
揺れ動く場合も発散という。有界な範囲内で振動する有界振動[oscillate finitely]と、
有界ではなく振動する振動発散[oscillate infinitely]がある。
(例)
n→∞のとき、
an= は収束、an=n+1→∞ は単純発散、an=cosn→±1の間で有界振動。
an=n cosnは+∞か−∞の両方になりうる振動発散。
<数列の極限値の性質>
n→∞のとき、数列anがαに収束し、数列bnがβに収束するとき、
数列の和、差、定数倍、積、商の極限値は、極限値の和、差、定数倍、積、商になる。
n→∞のとき、an+bn→α+β、an-bn→αーβ、c an→c α、an・bn→α・β、an/bn→α/β (β≠0)。
<無限等比数列の極限>
無限等比数列arn-1は公差によって収束、発散の状況が変わってくる。
r>1ならばan→∞(正の無限大)に単純発散。
r= 1ならばan=aとなり、an→aに収束。r が -1と1の間ならば、an→0に収束。
r =-1ならば、+1と-1を交互にくり返すから、有界振動。
r <-1 ならば、正と負をくり返しながら発散するから、振動発散。
(例)n→∞のとき、
an=(0.5)n→0 に収束。、an=2n→∞で単純発散。、an=(-1)n→±1で有界振動、an=(-1.5)nは±∞で振動発散。
等比数列と部分和って似てる???
2.数列の収束と和の収束
<部分和と無限級数>
無限数列をたし算したい。
そのために途中のn番目までの和を考える。
無限数列の1番目からn番目までの和を部分和[nth partial sum]という。
(例)Sn=1+1/2+1/4+......+1/2n-1は部分和。
部分和のSn=∑akのn→∞のときの極限値limSnを無限級数[infinite series](の和)といいます。
部分和という考え方を用意する理由は、数列を「無限にたすこと」を考える代わりに
途中までたした「部分和という数列」の極限値を求めると言い換えた方が扱いやすいからだ。
数列の極限値と部分和という数列の極限値。なかなか語呂がいいね。
部分和の数列S1,S2,S3,........,Sn,............の極限値を無限級数の和と呼ぶ。
つまり、∑∞an=limSn
(例)
無限等比級数{ak=ark-1|kは自然数}の部分和、つまり、有限級数の和は
・r≠1のときSn=a(1-rn)/(1-r) ・r=1のときSn=na
無限級数の和はrの絶対値が1未満ならだ。
<数列anの収束と部分和Snの収束>
部分和Snにも収束、単純発散、有界振動、振動発散がある。
部分和Snに有界な極限値βがあるとき、級数S∞はβに収束するという。
・「n→∞のとき、部分和Snが収束するならば数列an→0に収束する。」
しかし、その逆は成り立たない。「数列an→0に収束しても、部分和Snが発散するかもね。」
もちろん、対偶は成り立つ。
「n→∞のとき、数列an→0に収束しないならば部分和Snは発散する。」
・数列が0に収束して、部分和も収束する場合
(例)
数列an={1,1/2,1/4,.....,1/2n-1}→1/∞=0に収束する。 (n→∞のとき)
部分和Sn={1,1+1/2,1+1/2+1/4,1+1/2+1/4+1/8,...........,1(1-(1/2)n)/(1-(1/2))}
={1, 3/2,7/4, 15/8,........,2(1-(1/2)n)}→1/(1/2)=2に収束する。(n→∞のとき)
・数列が0に収束するのに、部分和が発散する場合
(例)
数列an={1/√1,1/√2,1/√3,.....,1/√n}→1/∞=0に収束する。 (n→∞のとき)
しかし、
部分和Sn=
n→∞のとき、f(n)→∞と発散する関数より部分和はいつも大きいから
Sn→∞で発散する。(n→∞のとき、)
(例)
数列an={1/1,1/2,1/3,......,1/n}→1/∞=0 (n→∞のとき)
区分求積でx=kにおける曲線y=1/xの幅1の積分と定数1/kの長方形の面積比較から、
integral(1/x,k,k+1)<integral(1/k,k,k+1)=1/k
これをあつめてintegral(1/x,1,n+1)=[log|x|]n+1 1=log(n+1)<∑(1/k)
部分和Sn=∑an>log(n+1)→∞だから、Sn→∞で発散する。
・数列が0に収束しないから、部分和が発散する場合
(例)
数列an={1/2,2/3 , 3/4, 4/5,.....,k/(k+1)}→1に収束する。 (n→∞のとき)
数列は0に収束しないので、
部分和Sn={1/2, 1/2+2/3,1/2+2/3+3/4,...........}→∞に発散する。(n→∞のとき)
(例)
「級数S=∑(1+1/n)n=∑((n+1)/n)nの収束/発散」はどうなる?
数列an={2/1,(3/2)2, (4/3)3,.........,(n+1/n)n}は0には収束しない。(n→∞のとき)
だから、級数は発散する。
3.極限値を求める
<極限値>
nを限りなく大きくすると、1/nは限りなく0に近づく。1/∞=0。
0は1/nの極限値[limit]で、 とかく。
極限値は、数列の一般項のnに∞を代入して求められるとは限らない。
・nに∞を代入すると∞/∞、∞-∞になる場合
∞になる速さが異なるときは、∞/∞は発散するときと0に収束するときがある。
∞になる速さのレベルが同じときは、nが1/nになるような式変形して、
0になる部分を作ることで極限値を求められるときがある。
(例)
(例)n→∞のとき、
=(例)n→∞のとき、
(例)n→∞のとき、
(理由)
・nに∞を代入すると1/∞になる場合
部分和が分数形なら部分分数に分解して相殺して単純化してから極限値を求めよう。
(例)
Sn=∑=∑=1/1-1/2+1/2-1/3+.....+1/n-1/n+1=1-1/(n+1)
n→∞なら、Sn→1。
(例)
n→∞なら、Sn=∑f(k)=
f(k)=(log(k+1)-logk)/logk・log(k+1)=1/logk-1/log(k+1)。
Sn=1/log22-1/log2(n+1)=1-1/log(n+1)。Sn→1-1/∞=1-0=1。
<ロピタルの定理>
f(x)とg(x)の極限値が等しく、0か±∞どれかになるとき、f(x)/g(x)の極限値はf'(x)/g'(x)の極限値に等しい。
というのがあります。
(例)
f(x)=x2,g(x)=2xはn→∞のとき、∞に発散する。f'(x)/g'(x)=2x/2xln2、f''(x)/g''(x)=2/2xln2ln2
だから、f(x)/g(x)→2/∞=0に収束するね。
<p乗数列>
n→∞のときの、nの正数p乗のの和Sn=∑1/npの収束/発散は、
pが1以下なら発散、pが1より大なら収束。
(例)
Sn=1+1/√2+1/√3+1/√4+1/√5+.....+1/√nは発散する。
Sn=1+1/2+1/3+1/4+1/5+.....+1/nは発散する。
Sn=1+1/22+1/32+1/42+1/52+....+1/n2はπ2/6に収束する。