ベクトル〜一行か一列にならぶ数
bをaに正射影したベクトルと垂線ベクトル
0.ベクトルって何?
ベクトルを定義すれば、ベクトルの説明にはなるけど、イメージ理解につながらなかったりする。
身近な例からイメージを作ってみよう。
日常では、株価の動きとか、為替レートの動きが話題になる。
個人的には、体重の変化とか体脂肪率の変化とかが気になる人もいるかもしれません。
そいういうデータは数字が並んだもの、数のデータになりますね。
これらの数のデータは、1つの項目について、時間とともに、
あるいは測定した日付などとともに記録される。
たとえば、毎日朝起きて体重を測り記録すると、
体重の数データができるね。
数列はプログラミングのデータでは、リストと言われているね。
3月1日から3月3日までの3日間の体重のリストは例えば、
T={66,65,66}
ここには、日付はデータ化されてないけれど、順番には意味がある。
T(0)といえば66、T(1)といえば65というように。。。。
複数のデータを並べた数の組はタプル。
x,y,z座標が1,2,3である点は(1,2,3)と書いたりするね。
このように、点の座標もタプルだ。
なお、似ているけどちがうものにセット(集合)というのがある。
重複したものを取り除いたリストだ。ユニークリストだね。
(65,66)
こうなると、もう順番はどうでもよくなってくる。
このように、プログラミング言語はデータを扱うものなので、
データ構造にはいろいろあるようだ。
さて、このように、項目の1データは、測定した数値は整数や小数で表せることがある。
つまり、実数だね。(数をスカラーということがあるよ。)
複数の項目の数(スカラー)を並べて、リストやタプルを作ろう。
それがベクトルなんだ。
たとえば、宅急便に出す荷物の箱の寸法があるね。
たて、よこ、高さの測定とその合計、4つの値を並べてみよう。
箱A:[ 20, 30, 40, 90]
箱B:[ 25, 30, 35, 90]
このように、4つの項目からなる1行のリスト(タプル)を特に、1行4列だから、行ベクトルという。
同じ内容を
1列4行に縦書きすることもできる。
すると1列4行の列ベクトルになる。
では、4行か4列だから4次元ベクトルか?
というとそうでもない。
くわしくは、次に考えるけど、
カンタンにいうと、4番め項目がたて+よこ+高さだから、前の3つの項目で計算可能だから。
ベクトルに記録しなくても、そのつど計算できるものだね。
しかし、たてとよこから高さを計算するわけにいかないから、高さは独立だ。
同じように、たて、よこ、高さは互いに独立なので、3つの項目が独立しているデータのベクトルだ。
だから、3次元ベクトルと言えそうだね。
1.内積と使い方
さあ、
さっきまでのベクトルのイメージを
今度は、文脈に依存しないで使えるようにするために、
できるだけ、一般化、明確化していこう。
そうは言っても、抽象的になりすぎそうなときは、
幾何ベクトルの例を使ってイメージが失わない程度の抽象化にしておこう。
<ベクトルの単位化>
ベクトル[Vector]の表示は太小文字1文字か、始点終点の順の太大文字2文字としよう。
(できるだけ斜体にしますが、イタリック体もあればボールド体、2重線文字も見かけます)
aは辺の長さ、aはベクトル、ABは辺、ABはベクトル。
・高校のベクトルと大学のベクトルの違い
高校数学では、点と点を結ぶ→(矢線)として、ベクトルの差やベクトルをつなぐことが
わりと大切だった。辺ABなら大きさがあるが、向きもあるのがベクトルだ。
という説明が中心だった。幾何ベクトルのことだった。
高校数学のベクトルは図形の方程式を座標なしにまとめて表示する道具でもあったね。
できるだけ幾何ベクトルや点の座標だけに頼らず、
数ベクトルやベクトル文字式の表記にも慣れよう。
・さて、ベクトルの大きさ、ノルム[norm]は||a||のように、2重絶対値記号とする。
・単位ベクトルは、ベクトルにベクトルの大きさで割ったもの(大きさの逆数をかけたもの)だね。
(例)e=a /||a||
・互いに平行でもなく0でもないベクトルは
1次独立[primary (linearly) independence]という。
・1次独立なベクトルのスカラー[scalar](実数)倍の和を1次結合[linear combination]という。
p=sa + tb + uc
ベクトルpは3つの1次独立なベクトルの1次結合で表される。
3次元空間はa,b,cで張られた空間である。
(一般化)
だから、1次独立なベクトルがn個あれば張ることのできる空間をn次元空間
と言えるね。
そのときのベクトルはn個の数、成分を並べて表示できる。
空間といっても、現実の物理的な空間に限る必要はないですよ。
たし・ひき算と、2倍、3倍のような定数倍できること。
それが成分ごとに独立して実行できる量であれば、それをベクトルとして扱えます。
<ベクトルの内積>
・幾何ベクトルとしての内積の定義
内積[inner product, dot product]は、
1つのベクトルに他のベクトルを正射影して向きを込めた長さの積
ドット積ともいい、2つのベクトルの間にドットをおく。
ベクトルの内積は、スカラー(実数)になる。
・2ベクトルが垂直だと射影した長さが0になるから、内積も0。
a・b=0 とかく。
・2ベクトルが平行だと、ただの長さの積になるが、同方向なら正、反対方向なら負。
a・b= ±||a|| ||b|| とかく。・2ベクトルが射影したあと逆向きなら負、同じ向きなら正。
このような正負や0という特徴はcosθの特徴からくるね。
a・b= ||a|| ||b|| cosθ
・数ベクトルとしての内積の定義
成分表示すると、a=[x1, y1, z1], b=[x2, y2, z2]とすると、
a・b= x1x2 + y1y2 + z1z2
||a||= x12 + y12 + z12
||b||= x22 + y22 + z22
a≠0,b≠0 のとき、
cosθ = a・b/ ||a|| ||b|| =(x1x2 + y1y2 + z1z2)/√(x12 + y12 + z12)√(x22 + y22 + z22)
aとbが垂直なとき、
a・b= x1x2 + y1y2 + z1z2=0
<内積の性質と利用>
・内積の性質[property]
対称性 a・b = b・a
線形性(分配) (a+b)・c = a・c+b・c
線形性(定数倍) (ka)・b = k(a・b)=a・(kb)
正定値性 a・a≧0
=は、a=0に限る。
・ノルムの性質
|| ka ||= |k| || a ||
| a・b |≦ || a || || b || (コーシー・シュワルツの不等式)
|| a + b ||≦ || a ||+ || b || (三角不等式)
・ベクトルbのベクトルaへの正射影[orthographic projection]ベクトル
定数(bの影のサイズは||b||cosθ)倍するのは、単位化したベクトルaはa/||a||だから、
||b||cosθ a/||a||=||a||||b||cosθ a/||a||2= (a・b /||a||2 ) a=cとしよう。
・ベクトルaへの垂線[Perpendicular line]ベクトル
ベクトルbの終点に逆cの始点をつなごう。
bーc
=bー(a・b /||a||2 ) a
(例)「a=[3,1,2],b=[-1,2,4]のとき、bのaへの正射影ベクトルcと、aに垂直なベクトルb-c」は?
a・b=-3+2+8=7。a・a=9+1+4=14 a・b /||a||2 =7/14=1/2
正射影ベクトル c= 1/2 a=[ 1.5, 0.5, 1]
垂線ベクトル b-c=[-1,2,4]-[1.5,0.5,1]=[-2.5, 1.5, 3]
(例)内積から余弦定理を導こう。
三角形OABで
AB2=(b-a)・(b-a)=a・a+b・b-2(a・b)
=OA2+OB2-2OA・OBcos角AOB
外積を法線ベクトルにしよう。
2.外積と使い方
<ベクトルの外積>
2つのベクトルの間に✕をおく。 a✕b= c
✕だから、クロスと呼ぶ。
ベクトルa,bの外積[cross product]は、
ベクトルcになる。
cの向きは、a,bの両方に垂直で、aからbに向かう右ネジの方向にある。
cの大きさは、a,bが張る平行四辺形[parallelogram]の面積Sである。
||a✕b||=S=||a|| ||b||sinθ=||a|| ||b||√(1−cos2θ)=√(||a||2 ||b||2−||a||2 ||b||2cos2θ)
=
外積の絶対値は内積で計算できるね。
成分表示すると、a=[x1, y1, z1], b=[x2, y2, z2]とすると、
a✕b=[ y1z2 - z1y2 , z1x2 - x1z2 , x1y2 - y1x2 ] サイクリックなたすき掛け
a = [x1, y1, z1 ,x1]
b = [x2, y2, z2 ,x2]
このように2段にして書き、サイクリックにできるようにz座標のあとにx座標をかいておく。
x成分を隠した次のyz列の4要素のたすき掛けがx座標、
y成分を隠した次のzx列の4要素のたすき掛けがy座標、
z成分を隠した前のxy列の4要素のたすき掛けがz座標。
・外積は2つのベクトルに垂直な法線ベクトルを求める手段として使える。
2直線の方程式から2つの方向ベクトルがわかる。この2つのベクトルの外積を
法線[normal]ベクトルとする。
そうすると、2直線を含む平面の方程式を作ることができるね。
・外積のサイズは、2つのベクトルを2辺とする平行四辺形の面積である。
だから、外積の半分で、3点の座標から三角形の面積を求めることができるね。
(例)三角形OABのA,Bの位置ベクトルa=[2,-1,1],b=[-3,2,1]とすると、三角形ABCの面積は?
||a✕b||=1/2√(||a||2 ||b||2−(a・b)2 )
= = = 。
a=[2,-1,1]
b=[-3,2,1]
外積は[-3,-5,1]だから、 ||a✕b||= = 。
(例)ベクトルa=[2,1,-1,1],b=[-1,0,3,2]とすると、ベクトルa,bで張る平行四辺形の面積は?
||a✕b||=√(||a||2 ||b||2−(a・b)2 )
= ==。
<外積の性質と利用>
交代性:a✕b=-b✕a (積の順番を変えると右ネジが逆向きになる。)
線形性(分配):(a+b)✕c=a✕c+b✕c
線形性(定数倍):(ka)✕b=k(a✕b)=a✕(kb)
<図形の方程式>
・点A(x1, y1, z1)、点P(x, y, z)を通る直線APの方向ベクトルをd=[l, m, n]とする。
AP=kdとなるから、k=
・点A(x1, y1, z1)、点P(x, y, z)を通る平面の法線ベクトルをh=[l, m, n]とする。
AP・h =0 となるから、
(例)2直線L1,L2について、L1と平行でL2を含む平面πの方程式を求めよう。
L1:、L2: 。
πはL2が通る点A(2,-1,2)を通る。
πの法線ベクトルhはL1とL2の方向ベクトルd=[-1,2,4],e=[3,1,1]と垂直だ。
d=[-1,2,4]
e=[3,1,1]
d✕e=[2・1 - 4・1, 4・3 - (-1)・1, (-1)・1 - 2・3]=[-2, 13, -7]
-2(x-2)+13(y+1)-7(z-2)=0
だから、2x-13y +7z -31=0 。
・Rn空間では、内積形が図形を表す。
R2空間では、ax+by+c=0は法線ベクトルがn=(a,b)の直線の方程式
R3空間では、ax+by+cz+d=0は法線ベクトルがn=(a,b,c)の平面の方程式。
3.演習
・R3のベクトル のとき。a+b, ||a||, ||b|| , a・b, a✕b, ||a✕b|| は?
a・b=
a✕b=
||a✕b||= または、